勝手にふるえてろ

世の中にはいろんな成功者がいて、ものすごく底辺から始まるサクセス・ストーリーというのも山ほどある。私の二浪なんて何てことなくて、もっと、必要悪として人生を踏み外す方法はないだろうか。友達に訪ると、「そんなの簡単だ」「一瞬だ」と言う。まずタマビを辞める。そして家を出る。そこから違う人生だよ、とのこと。なるほど簡単で、変な鳥肌が立つ。最近愚考ばっかりで、私はまだ就職先を決めていない。


内定辞退は、書面で連絡するのが正式なのだと思っていたが、そうではないらしい。電話連絡のち、訪問、直々にお詫び、という流れが最善のようで、それを知って、急に腰が重くなってしまった。最初の内定をA社、最後の内定をB社として、私は現在B社に暫定しているが、A社へ覆る何かおっきな転機をずっと探している。A社のほうが好きでなかなか手放せない。純粋に「好き」よりも、「守っていきたい」とか「継承したい」とか「成長させたい」という会社のほうに就職するべきだと言われ、そのときは妙に納得したけれど、もう少し考えようと思う。


今日のこと。今日は本屋で、綿矢りさの新刊を発見した。いちばん好きなひととは結婚できない、みたいなトレンディーな内容。自分が好きなひとと自分を好きなひととのあいだで揺れるお話。なんだか私の悩みと質が似てるなぁと思えば思うほど、表紙の文字がバーンと訴えてくる。『勝手にふるえてろ』っていうタイトルだった。綿矢節、健在。綿矢りさはよく叩かれて、認めないひともいるけれど、十七歳からずっと書き続けて立派だなと、ふと思った。平積みである。正面切って「勝手にふるえてろ」とは、職業作家の凄み。