晦日の予定が、急に色めき立つ。「今年は一緒に帰ろう」と言われてびっくりして、でも素直にうれしく、それを了解。「さくら市」というのどかな街の名前から、お義母さんとお義父さんのイメージが膨らんでいく。自分の親の反応は、楽しみだねということと、子どもは東京で産んだらどうか、というようなことだった。人生の生き直し。出発のゼロが近づいてくるこわさ。始まりは終わり。




電気を消して、ひとりで仰向けに寝ていると、背筋の下で、こおろぎが懸命に鳴いていました。


縁の下で鳴いているのですけれど、それが、ちょうど私の背筋の真下あたりで鳴いているので、
なんだか私の背骨の中で小さいきりぎりすが鳴いているような気がするのでした。


この小さい、幽かな声を一生忘れずに、背骨にしまって生きていこうと思いました。


— via「きりぎりす」太宰治