未成年

夜までバイト。デッサンの課題中に、大卒の浪人生が「帰りたいです」と言い出した。「調子でません」とのこと。体調的なことじゃなくて精神的なもの。受験生のあるある。私も上手く描けない日に予備校から逃げたことある。「君は大人だから任せる」と答えたら、結局その浪人生はなんやかんや最後まで居た。片付けのとき、労いに超古典的な激励(痛くないやつ)を一発おみまいした。効いたかどうかは不明。


逆に私から帰宅を指示したことがあって、そのとき相手は高校生だったけど、ごねて帰ろうとしなかった。熱のある顔して咳も酷いのに「頑張れます」と言った。そして「両親は旅行に行っているから今日は家に誰も居ません」と言ったのだ。(は?)一瞬、風邪と親の不在がどう関係するの?と考えて(甘えん坊か?)と思い当たってクラクラした。その幼さが羨ましくて、対象的に自分が意地悪く思えて衝撃だった。


子供には、子供が当たり前に望んで良い権利があって、体調が悪くて早退するとなれば、きっとお母さんは風邪に効く夕飯を作って迎えてくれるし、ポカリを冷やしておいてくれる。弱ったとき当たり前に手厚く扶養される。もし私が同じ状況だったらば、望むも何もイメージするのは単なる荒療治な自己管理で、さっさと寝るとか、市販の薬で何とかするとか、そういうことだと思う。だから、あのとき「帰ってすぐ寝なよ」と言って諭した私は少しズレていたのだ。とっくに扶養義務者の側で、もっと社会的責任があるのだと気付いて衝撃だった。




世の中の厳しい現実には、身もふたもないほど現実的であらねば立ち向かえない。
夢を見続けている人間は、夢を捨てた人間が守っているのだ。
— via「愛しの座敷わらし」荻原浩