帰りの電車を待っているとき、シャッフルしたiPodから不意に真心ブラザーズのバラード流れてきて、そのまま線路へ飛び降りそうになるこの感じ。分かるひと。最後尾に乗るためホームの端っこに居た。ヨーキンが涙ながらに歌うから今日は全然だめだった。下の線路見つめた。寸でのところで勢い良く電車が突っ込んできた。真ん前にドアが来て、乗車した。なかにスーツ姿の男のひとがいて、紙袋からカレンダーの筒が見えた。このひとは営業マンなんだとぼんやり思った。




電車の中で読むものを忘れ、車窓からみえる大きな文字を眺める。
どれほど遠くにあるものか、どれほどの大きさか、全くわからない。
それが書き始めの一文字であることはわかっている。先を書かれるのを待っている。
電車の中で読むものを忘れたが、長引く非常停車のお詫びにと、車掌が本を読み上げ始める。
登場人物の紹介が延々つづき、車内にざわめきが広がる。
自分の名前が呼ばれ、数語で的確に表現された特徴にたじろぐ。
本の中で、みな同じ電車に乗っている。
発車の揺れに小突かれて、全員が同じ方向に傾く。
— via「電車の中で」倉田タカシ