結ぼれ

初めて未映子に手紙を書いた。文藝春秋へ宛てた。速達で。最近トーンが一向上がらず、未映子がとっても悲しそう。今週の『発光地帯』なんて、かわいそうでかわいそうで読み返せない。未映子は斎藤くんと結婚できたらよかったのにと思う。未映子も思ってたと思う。『わたくし率』では青木の名前で登場するけどきっと斎藤くんのことを言っているんでしょう。『そらすこん』にはそのまんま斎藤くんが書いてある。もっと大きい声ではっきり言えたらいいのに、それが出来ないほど憂鬱なのだから、未映子の心痛案ずるだけで息出来なくなる。


ひとは二度死ぬ、とよく聞くけれど、肉体の死のあとで、誰のこころの中からも消え去られてしまうことを二度目の死と捉えるのだそうで、だから忘れちゃいけないよ、故人を想い続けることが大切だよっていうのらしい。偶然にも訃報が相次いで、先日、幼馴染みのお母さんと大学の先生が亡くなり、先週はお通夜に参加するなどして、いろいろと考えた。生きてさえいれば、人生のうちにやり直せない選択なんて無いんではないか。「掛け違えたボタンを正すには、最初に掛け違えたところまで戻って掛け直すしかない」みたいな文章を何かで読んだけれど、要は可能を指しているのだと私は思った。




色んなことを色んな風に
いっぱいいっぱい喋ってきたけど それはしかし
涙をだらりとさせられるのは
君が喋らんかったことのほう
君に喋られへんかった言葉のほう
— via「そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります」川上未映子