左手の手袋について

急に決心して、ある目上のかたに申し込んで夕飯に同行した。でもでも。おしゃれなテーブルが低くて食べにくいのと、緊張とで、全然ごはんが喉を通らず。意図あって会うには、センスが不可欠のようでした。例えば帰省とか、同窓会とかお見舞いみたいに、“顔を見せる” だけで何でもこなしているように思う慣習に託つけて体裁を成しても、隠し切れない恥ずかしさがあった。本音では【私というひとが居ます】という訴えに他ならなくて、若い。でも今は転機が必要なのだ。


今日まで三連休だったので、たまった用事を済ませたり、海を見に行ったりした。タカミが高橋くんの誕生日プレゼントを買うとのことで、一緒に選んだ。高橋くんはタカミに、全ボーナスでダイヤモンドを贈ったそうなので、非常にプレッシャー。どうしようかとたくさん見て回った結果、アローズのベルトに落ち着いた。アローズが特段好きという訳ではないが、凄く良いのがあったので、熟考の末。タカミと高橋くんには温度差があって、でもそこが素敵。持て余される愛情が、何故か傍目に可愛らしい。何を善し悪しと、それは誰にも言えないことなのかもしれない。




タカミ「左手の手袋を裏返したら何手になると思う?」
わたし「右手?」
タカミ「左手だよ〜」
わたし「なんでなんで」
タカミ「だってそういう世界だから」