ヘヴン

『ヘヴン』は未映子の新刊です。先日、未映子さんに初めてお目にかかりました。新刊出版記念のサイン会があって、まさかと思うと思うけど私はこれに参加してきました。今までの自分だったら考えられない行動ですがどうしても会いたい想いが強くて行きました。


未映子、実際に会ってみて凄く素敵でした。“素敵な女性” のほうの未映子に会いました。本の中の未映子は、生牡蠣みたいな脆くて柔らかい無垢な人であるのに、こういう公の場やメディアに出るときはいつも上品にシールドをまとっていて艶っぽい。単に感情移入ですが、私はそのよそゆきを案じます。と同時に、何故かもの凄く安心感を抱きます。もちろん、未映子は30代の大人であって、握手した手の感じに幼さなどは何処にも無く、長い指にはゴツめの指輪と、その指輪には小さなてんとう虫の飾りが付いているのでした。それを見て私は、ああ、と声が出そうになるのを飲み込んで、ふーんと納得して腑に落ちる。未映子は少し右上がりに泳ぐようなしゅっとした大人の字で「川上未映子」と書いた。私なんかが心配しなくても、未映子未映子でちゃんと大気圧に耐えうる内圧で以て形成されるのであって外見は中身の一番外側、結局自分を守るのは自分なのだなあと感心する。


全く予想外の展開でしたが、会場は仕事帰りのサラリーマンやOLが多く居て、学生ぽい人はほとんど男の子だったから、(あらまあ女の子!?)みたいな表情で目が合った未映子は「かわいらしいお洋服やね」と言ってくれました。その上、情熱大陸に出ていたあの講談社の女性編集者が「未映子さんの好きそうな感じのかたですね」とか言うから「ほんまやわあ」と未映子も笑っていて私は何とも言えない照れと恥ずかしさに吹いてしまって動揺して本当に何も言えなかったです。私は未映子の目の中を見やったのだけど、割と茶色めの黒目には多角形の光が写り込んでいて、とても綺麗でした。