山崎豊子死去。本屋で山崎豊子の文庫の棚が品薄になっていた。



今週いっぱいで退職します。日曜までが出勤で、あとはリフレッシュ残とわずかな有給です。
これまでお世話になった方へ、ありがとうございました。




今のお店に異動する前、相模の店舗でのこと。私が出て行く分の後続として一人、配属された新入社員。読書が好きだと噂に聞いていた。彼女とはシフトが合わなくて、異動する数日前にやっと出勤が重なって、初めて会ったとき、「他の方から山口さんも好きだと聞きました」ということを嬉しそうに言ってくれた。朝井リョウと同じ学部出身で、在籍も二年だったか被っていたらしく、同じゼミで、まさしく当時はもう “朝井先輩” として慕っていたらしい。


朝井リョウと聞いて、「朝井リョウの【何者】が文庫になるの待ってるんだ」と言ったら、「単行本持っているので貸しましょうか?」
就活で人並みに厭な思い出はあるけど、そこからレベルが変わってない自分が今これを読んだら、何かウッと喰らってしまうような気がしてそれが怖くて今は避けてるよ「読んでどうだった?」「私は就活中に読んじゃったので喰らいました・・・笑」「そっか・・・笑」




こっちに異動してきてから、乗り換えの秋津で、23時までやってる本屋を見つけたのは数ヶ月後のことで、立ち寄るようになったのはここ数週間のことで、初めて買ったのはなんとなく妊娠出産の本で、レジの女の子が最後にその本を私に手渡す際「ありがとうございます」と間違えて「おめでとうございます」と確かに言ったのでギョッとした。


通っているうち、自分が新潮文庫の三角を集めていることや、いろんな感情を、というか普通に本読みたいなとかを、徐々に思い出していった。【何者】が文庫になるタイミングで買おうと思っていたけど、退職も決まってなんとなく、荷が下りて、少しやりたいことしようと思って、結局単行本で昨日買った。この装丁が好きで、文庫になったときこれじゃなかったらヤだなっていうことも単純に思った。






何のためにとか、誰のためにとか、そんなこと気にしている場合じゃない。
本当の「がんばる」は、インターネットやSNS上のどこにも転がっていない。
すぐに止まってしまう各駅停車の中で、寒過ぎる二月の強過ぎる暖房の中で、ぽろんと転がり落ちるものだ。
各駅停車に乗っていると、東京は思ったよりも大人しい町だということに気が付く。
田舎の町を出て憧れの東京に来たとしても、そこは町と町がつながってできている場所なんだと、気が付くことができる。
心機一転、小さな町を飛び出して娘と新しくスタートを切ろうとしていた瑞月さんの母親も、
早くそのことに気が付くといいと思った。
嫌で嫌で飛び出した小さな町からひとつずつ町が繋がって、その先に東京があるだけなのだ。東京だって、小さな町と何も変わらない。
「瑞月さんががんばるなら、俺もがんばるよ」
やっと言えた一言は、言葉とはうらはらにとても弱々しくて、我ながら説得力がなかった。だけど瑞月さんは黙って頷いてくれた。
— via「何者」朝井リョウ