公園のベンチで本を読んでいたら、空気をかき混ぜるような風が吹いてきて、ページに落ちる木の枝葉の影が揺れた。いつのまにか文字よりも、その影と紙の白さのコントラストに目を奪われて、綺麗だなぁと思っていた。



だんなさんと、過去最悪の、別れの感じになってフリで自分の荷物をまとめたら段ボール三箱だった。どうしようどうやって仲直りしたら良いんだと思っておろおろしていたら解決策が見つからないままとうとう配送まで完了して実家にドスンと届いた。ふたつに割り切れないものは後日お金で清算するという冷たい約束までして、本当に終わってしまいそうだった。最後にひとりで妊娠検査をしたら陰性で、これまで幾度かふたりで見たときは安堵だったのに初めて心の底から喪失感を感じた。


結局はその二日後に、ちょっとした偶然と強烈な情念引力で夫婦に元通ったのだけど、お互い心を入れ替えて本当の夫婦になる本当の準備をちゃんと始めることにしたり。そのときに、だんなさんは素晴らしい文章で以て私について詠み上げたので、私はびっくりして、脳が昇天する想いでそれを聴いていた。言葉の素晴らしいひとは、それだけで、愛する意味があると思った。